業績リスト:関正明の英語論文

これまで発表した英語論文を簡単な解説とともに、最近のものから順にリストアップしました。「Seki M」が私(関正明)です。2014年9月アップデートしました。

英文総説

Seki M, Lipton SA. Targeting excitotoxic/free radical signaling pathways for therapeutic intervention in glaucoma. Prog Brain Res. 2008;173:495-510.

英語で書いた唯一の総説(レビュー)です。緑内障におけるグルタミン酸毒性の関与と、グルタミン酸受容体阻害剤による緑内障治療の可能性について、文献的な考察に加え、自験結果を含め考察しています。アルツハイマー病の治療薬として日本でも認可されているメマンチンの、緑内障治療への可能性についても言及しています(ただしアメリカでは臨床治験で有効性を示せなかった)。アメリカ バーナム研究所に勤務中の仕事です。


英文原著論文

(臨床の論文)

Seki M, Fukuchi T, Yoshino T, Ueda J, Hasebe H, Ueki S, Oyama T, Fukushima A, Abe H. Secondary glaucoma associated with bilateral complete ring cysts of the ciliary body. J Glaucoma. 2014 Sep;23(7):477-81.

Journal of Glaucoma (その名も「緑内障雑誌」)に掲載された論文です。これまで報告のない両眼性かつ全周性虹彩嚢腫により閉塞隅角緑内障をきたした症例の報告です。このような病態は本報告が初めてのものです。閉塞隅角緑内障は白内障手術と硝子体手術により治療することができました。

Seki M, Yamamoto S, Abe H, Fukuchi T. Modified ab externo method for introducing 2 polypropylene loops for scleral suture fixation of intraocular lenses. J Cataract Refract Surg. 2013 Sep;39(9):1291-6.

新潟大学眼科勤務中に開発した「簡便な眼内レンズ縫着方法」に関する英語論文です。詳細はこちら

Seki M, Fukuchi T, Ueda J, Suda K, Nakatsue T, Tanaka Y, Togano T, Yamamoto S, Hara H, Abe H. Nanophthalmos: quantitative analysis of anterior chamber angle configuration before and after cataract surgery. Br J Ophthalmol. 2012 Aug;96(8):1108-16.

イギリスの眼科学会が発行している眼科雑誌に掲載されました。小眼球症という稀な疾患では、しばしば閉塞隅角緑内障を合併します。小眼球症の患者さんに白内障手術を行うことで、隅角閉塞が軽減し眼圧が低下することを、世界で初めて定量的に明らかにしました。詳しくはこちら。新潟大学眼科での仕事です。

Sakaue Y, Ueda J, Seki M, Tanaka T, Togano T, Yoshino T, Fukuchi T. Evaluation of the new digital goldmann applanation tonometer for measuring intraocular pressure. J Ophthalmol. 2014;2014:461681.

緑内障の管理に重要な眼圧ですが、正しい測定には接触型の眼圧計を使用します(空気で測定する非接触型の眼圧計も臨床では多く用いられていますが)。広く用いられている接触型眼圧計の測定値はダイアル式のメモリを検者が読み取るタイプのものでした。本論文ではデジタル式に測定値が表示される眼圧計を用いて、その再現性などについて検討を行っています。新潟大学眼科での共著論文です。

Ishii M, Seki M, Harigai R, Abe H, Fukuchi T. Reading performance in patients with glaucoma evaluated using the MNREAD charts. Jpn J Ophthalmol. 2013 Sep;57(5):471-4.

視力が良好に保たれている緑内障患者さんを対象に読書能力を検討しました。視力が保たれていても、読書能力が低下する場合があることを明らかにしました。新潟大学眼科での共著論文です。

Fukuchi T, Yoshino T, Sawada H, Seki M, Togano T, Tanaka T, Ueda J, Abe H. The relationship between the mean deviation slope and follow-up intraocular pressure in open-angle glaucoma patients. J Glaucoma. 2013 Dec;22(9):689-97.

緑内障患者さんの眼圧コントロールと視野の進行の相関について検討を行っています。たとえ正常眼圧緑内障であっても、視野の悪化する患者さんは高い眼圧・大きな眼圧変動を有することを明らかにしました。新潟大学眼科での共著論文です。

Yoshino T, Fukuchi T, Togano T, Seki M, Ikegaki H, Abe H. Eyelid and eyelash changes due to prostaglandin analog therapy in unilateral treatment cases. Jpn J Ophthalmol. 2013 Mar;57(2):172-8.

緑内障治療の第一選択とも言えるプロスタグランジン関連薬ですが、その副作用として眼瞼の色素沈着や睫毛の変化が挙げられます。本論文ではプロスタグランジン関連薬を使用する患者さんを対象に、これらの変化を半定量的に検討しました。新潟大学眼科での共著論文です。

Yoshino H, Seki M, Ueda J, Yoshino T, Fukuchi T, Abe H. Fibrin membrane pupillary-block glaucoma after uneventful cataract surgery treated with intracameral tissue plasminogen activator: a case report. BMC Ophthalmol. 2012 Mar 20;12:3.

眼科領域でのオンラインジャーナルの草分け的雑誌に掲載されました。術中・術直後にはまったく問題のなかった白内障手術後の患者さんに生じた稀な合併症についての症例報告です。薬物の眼内投与により速やかな治療が可能でした。眼科レジデント医師に筆頭著者になってもらいました。全文閲覧出来ます。新潟大学眼科での仕事です。

Fukuchi T, Yoshino T, Sawada H, Seki M, Togano T, Tanaka T, Ueda J, Abe H. Progression rate of total, and upper and lower visual field defects in open-angle glaucoma patients. Clin Ophthalmol. 2010 Nov 18;4:1315-23.

新潟大学眼科での共著論文です。筆頭著者は新潟大学眼科の現教授 福地健郎先生です。開放隅角緑内障患者さんの視野経過を眼圧の高いグループと低いグループで比較し、高いグループでは下方の視野障害の進行が早いことを報告しています。

Fukuchi T, Sawada H, Seki M, Oyama T, Cho H, Abe H. Changes of scleral sulfated proteoglycans in three cases of nanophthalmos. Jpn J Ophthalmol. 2009 Mar;53(2):171-5.

小眼球症(詳しくはこちら)の患者さんでは強膜(白目部分の丈夫な組織)が厚くなっていることが知られています。患者さんの強膜組織を電子顕微鏡で観察したところ、正常強膜との違いが明らかになりました。新潟大学眼科での共著論文です(福地先生筆頭著者)。

Fukuchi T, Ueda J, Yaoeda K, Suda K, Seki M, Abe H. The outcome of mitomycin C trabeculectomy and laser suture lysis depends on postoperative management. Jpn J Ophthalmol. 2006 Sep-Oct;50(5):455-9.

現在は標準的な術式とされている代謝拮抗薬マイトマイシンCを用いた緑内障手術(線維柱帯切除術)の新潟大学眼科での結果を解析した論文です。術後に、より積極的な管理をした群で眼圧が下がったという結果は、術後管理の重要さを強く示唆しています。新潟大学眼科での共著論文です(これも福地先生の論文)。

Fukuchi T, Ueda J, Yaoeda K, Suda K, Seki M, Abe H. Comparison of fornix- and limbus-based conjunctival flaps in mitomycin C trabeculectomy with laser suture lysis in Japanese glaucoma patients. Jpn J Ophthalmol. 2006 Jul-Aug;50(4):338-44.

こちらも緑内障手術(線維柱帯切除術)に関する福地先生の論文です。線維柱帯切除術では結膜を切開しますが、切開部位による術後眼圧の差はなかったというのがこの論文の結論です。データをしっかり解析することで、臨床的な「印象」に頼らない正しい結果が導き出されるという一例ですね。


(基礎研究の論文)

Rezaie T, McKercher SR, Kosaka K, Seki M, Wheeler L, Viswanath V, Chun T, Joshi R, Valencia M, Sasaki S, Tozawa T, Satoh T, Lipton SA. Protective effect of carnosic acid, a pro-electrophilic compound, in models of oxidative stress and light-induced retinal degeneration. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2012 Nov 27;53(12):7847-54..

眼科領域の基礎研究分野で最も権威の高い雑誌に掲載されました。下の2011年発表の論文の続報です。2011年論文ではローズマリーに含まれる化学物質とその誘導体が、培養網膜色素上皮細胞の酸化ストレスによる細胞死を防ぐことを明らかにしました。この論文ではさらに、培養細胞系と連続光照射によるラット網膜障害モデルで、これらの化学物質が視細胞変性を防ぐことを明らかにしています。(米国 バーナム研究所での仕事です。)

Satoh T, Rezaie T, Seki M, Sunico CR, Tabuchi T, Kitagawa T, Yanagitai M, Senzaki M, Kosegawa C, Taira H, McKercher SR, Hoffman JK, Roth GP, Lipton SA. Dual neuroprotective pathways of a pro-electrophilic compound via HSF-1-activated heat-shock proteins and Nrf2-activated phase 2 antioxidant response enzymes. J Neurochem. 2011 Nov;119(3):569-78.

上の2012年の論文の元になった培養細胞系での研究成果です。神経科学領域の雑誌に掲載されました。加齢黄斑変性症では酸化ストレスによる網膜色素上皮細胞障害が視細胞変性に先行します。その予防に抗酸化作用のある物質が効果を持つのでは、と提唱されています。本論文ではローズマリーに含まれる化学物質とその誘導体が、培養ヒト網膜色素上皮細胞の酸化ストレスによる細胞死を防ぐことを明らかにしました。鍵となる実験結果を、研究室に夏休み実習に来た優秀な学生さん「チャールズ君」に指導しながら得ることができました(米国バーナム研究所での仕事です。)

Seki M, Soussou W, Manabe S, Lipton SA. Protection of retinal ganglion cells by caspase substrate-binding peptide IQACRG from N-methyl-D-aspartate receptor-mediated excitotoxicity. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2010 Feb;51(2):1198-207.

眼科領域の基礎研究分野で最も権威の高い雑誌に掲載されました。緑内障などでは網膜の神経細胞が死んでしまうことで視機能障害が生じます。それゆえ、神経細胞が死なないようにしてあげれば(神経保護)、見え方の悪化や失明は起こらないだろうと提唱されています。この論文では、細胞死の実行に関わるタンパク(カスペース)を阻害するIQCRGペプチドをラット眼内に投与することで、神経細胞死を防ぐことに成功しました。またIQACRGペプチドを投与することで、細胞毒にさらされた神経細胞が正常の電気的な神経活動を保てることを明らかにしました。深夜まで暗室で実験をしていて大変でした!!(米国バーナム研究所での仕事です。)オンラインで全文閲覧出来ます。

Sakai Y, Tanaka T, Seki M, Okuyama S, Fukuchi T, Yamagata K, Takei N, Nawa H, Abe H. Cyclooxygenase-2 plays a critical role in retinal ganglion cell death after transient ischemia: real-time monitoring of RGC survival using Thy-1-EGFP transgenic mice. Neurosci Res. 2009 Dec;65(4):319-25.

新潟大学眼科から私と同じ研究室(新潟大学脳研究所 分子神経生物学分野)に出向研究していた後輩医師達との共著論文です。緑内障という病気では網膜神経節細胞という細胞が特異的に死んでいくのですが、生体内でそれを観察する術を追い求めたのが本論文です。遺伝子操作を行い網膜神経節細胞のみが蛍光を発する特別なマウスを作成、死にゆく網膜神経節細胞を蛍光眼底カメラ(臨床で使用されているもの)を用いてリアルタイムに観察しました。また炎症に関わるとされる酵素(COX-2)を薬物または遺伝子操作により阻害することで、網膜虚血による網膜神経節細胞死が抑制できること(神経保護)を、この遺伝子改変マウスを用いて明らかにしました。神経科学領域の雑誌に掲載された時は肩の荷が下りた感じがしました。御指導して下さった脳研究所の先生方には今も頭が上がりません。

Seki M, Tanaka T, Sakai Y, Fukuchi T, Abe H, Nawa H, Takei N. Müller Cells as a source of brain-derived neurotrophic factor in the retina: noradrenaline upregulates brain-derived neurotrophic factor levels in cultured rat Müller cells. Neurochem Res. 2005 Sep;30(9):1163-70.

新潟大学脳研究所で大学院生として研究していた時の成果です。光を感じる網膜は神経細胞が密に集積した組織ですが、そこには神経細胞を支えるグリア細胞も存在しています。2003年に発表した論文で(4つ下の論文)、神経栄養因子が網膜ではミューラー細胞(グリア細胞の一種)であるにもあることを明らかにしています。この論文ではミューラー細胞を培養し、神経栄養因子を多く作らせることに挑戦しました。その結果、交感神経作動薬を作用させることで、神経栄養因子の中でも特に網膜神経節細胞に保護効果の強い「脳由来神経栄養因子(BDNF)」がミューラー細胞で多く作られ分泌されることを明らかにしました。神経科学領域の雑誌に掲載されています。

Seki M, Tanaka T, Matsuda H, Togano T, Hashimoto K, Ueda J, Fukuchi T, Abe H. Topically administered timolol and dorzolamide reduce intraocular pressure and protect retinal ganglion cells in a rat experimental glaucoma model. Br J Ophthalmol. 2005 Apr;89(4):504-7.

新潟大学眼科の大学院生数名(当時)を主とした共著論文です。この論文ではラットに実験緑内障を引き起こし、実際の治療に用いられている数種の点眼薬の作用を、眼圧と網膜神経節細胞数を指標に評価しました。イギリスの眼科学会が発行している眼科雑誌に掲載されました。オンラインで全文閲覧出来ます

Seki M, Fukuchi T, Tanaka T, Nawa H, Takei N, Abe H. Quantitative analyses of mRNA and protein levels of neurotrophin-3 in the rat retina during postnatal development and aging. Jpn J Ophthalmol. 2004 Sep-Oct;48(5):460-4.

神経栄養因子のうちの一つ「ニューロトロフィン-3」の網膜での生後~老化に至るまでの発現量の変化を定量的に解析しました。2つ下の論文で調べた「脳由来神経栄養因子(BDNF)」とは異なり、ニューロトロフィン-3では発達段階における変化は少ないものでした。日本眼科学会が発行する英文雑誌に掲載されました。新潟大学脳研究所で大学院生として研究していた時の成果です。

Seki M, Tanaka T, Nawa H, Usui T, Fukuchi T, Ikeda K, Abe H, Takei N. Involvement of brain-derived neurotrophic factor in early retinal neuropathy of streptozotocin-induced diabetes in rats: therapeutic potential of brain-derived neurotrophic factor for dopaminergic amacrine cells. Diabetes. 2004 Sep;53(9):2412-9.

糖尿病の分野では最も権威の高いアメリカの英文雑誌に掲載されました。私の論文の中では、ほかの論文に引用された回数(被引用回数)が最も多い論文です。

糖尿病の合併症である糖尿病網膜症に関する基礎研究です。糖尿病網膜症は主に血管病変が原因とされてきました。この論文ではラットに糖尿病を惹起し、その網膜で神経細胞死がごく早期から起こり始めること、また糖尿病網膜では神経栄養因子の一つ「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が著明に減少していることを明らかにしました。さらに、BDNFを眼内に補うことで糖尿病ラットの網膜で起こる網膜神経細胞死を抑制できる(つまり神経を保護する)ことを明らかにしました。新潟大学脳研究所で大学院生として研究していた時の成果です。オンラインで全文閲覧出来ます

Seki M, Nawa H, Fukuchi T, Abe H, Takei N. BDNF is upregulated by postnatal development and visual experience: quantitative and immunohistochemical analyses of BDNF in the rat retina. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2003 Jul;44(7):3211-8.

眼科領域の基礎研究分野で最も権威の高い雑誌に掲載されました。神経栄養因子の中でも、特に網膜の神経細胞に保護作用が強いとされるものが「脳由来神経栄養因子(BDNF)」です。私は緑内障との関係でBDNFの網膜神経節細胞に対する神経保護作用に興味を持っていました。しかし、網膜での内在性BDNFの発現動態についてはほとんど分かっていないのが現状でした。そこで、まずラット網膜でのBDNFの含有量・発現量を調べたところ、生後に瞼が開く時期に一致してBDNFの量が増えていることがわかったのです。BDNFの量が視覚刺激に関連すると仮説を立て、瞼を開かないように手術をしたラットの視覚刺激遮断モデルにおいて網膜BDNF量を測定しました。すると、視覚刺激を遮断した眼において網膜BDNF量が減少していることが分かりました。

この論文はこれまで大脳レベルでは明らかにされていた弱視の形成メカニズムに網膜そのものも関与するものとして、私の論文の中では被引用回数が2番めに多い論文です。新潟大学脳研究所で大学院生として研究していた時の成果です。オンラインで全文閲覧出来ます

Seki M, Nawa H, Morioka T, Fukuchi T, Oite T, Abe H, Takei N. Establishment of a novel enzyme-linked immunosorbent assay for Thy-1; quantitative assessment of neuronal degeneration. Neurosci Lett. 2002 Aug 30;329(2):185-8.

思い出深い初めての英語論文です。この論文のお陰で、博士号を取得し、日本眼科学会認定専門医の試験の「受験資格」を手にしました。緑内障で特異的に死んでいく網膜神経節細胞の細胞マーカーであるThy-1の定量的な解析法を確立しました。新潟大学脳研究所で大学院生として研究していた時の成果です。新潟大学腎研究所の先生方にもご協力頂きました。


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