「緑内障なのですが、このクスリを使っても大丈夫ですか?」

患者さんや医療スタッフから、時々この質問を受けます。なぜならば、薬剤添付文書(説明書)の禁忌欄に「緑内障」と記載されている薬剤が数多くあるからです(図)。

 

図

緑内障は「視神経(眼で受けた情報を脳に伝達する神経)」の病気で、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に大別されます。前者の「開放隅角」緑内障の場合、添付文書の禁忌欄に緑内障と記載されている薬剤であっても、その使用には問題がないと考えて良いでしょう。

後者の「閉塞隅角」緑内障の場合には、注意が必要です。しかし、閉塞隅角緑内障あるいはその予備軍(原発閉塞隅角症)と眼科で診断されている患者さんの場合、既にレーザー治療(虹彩切開術)や白内障手術などの予防治療が行われていることがほとんどです。これらの治療が済んでいる患者さんの場合、添付文書の禁忌欄に緑内障と記載されている薬剤であっても、著しい眼圧上昇を来すことはまずありません。

つまり、眼科で緑内障という診断を受けている患者さんの場合には、かえって問題を生じることは少ないのです。

 

実は、最も注意が必要な方は、もともと目が良くて(近眼ではなく、若い頃メガネ無しで遠くが良く見えた方)、眼科を受診したことがない方なのです。このような方の中に、房水(眼内の水)の通路がもともと狭い「原発閉塞隅角症」の方がいらっしゃいます。原発閉塞隅角症であっても自覚症状は全くありません。ところが、そのような方が、禁忌欄に緑内障と記載されている薬剤を使用した場合に、緑内障発作(急な眼圧上昇を起こし、視力低下・眼痛・頭痛・吐き気・嘔吐などを生じる)を発症する危険性があります。発作が起こった場合には数日で失明することもあります。万が一、これらの症状が起きた場合、早めに医療機関を受診して頂くことが最も重要となります。

(この文章は外勤先の新潟医療センター機関紙「新潟医療センターニュース」に掲載されたものを、許可をとって転載させていただきました)

LINEで送る